HOMEClassroom FLSのための基礎知識脆弱性骨折を取り巻く現状
FLSのための基礎知識
脆弱性骨折を取り巻く現状
高齢化と骨折リスク
ここでは、日本の高齢化の進展とそれに伴い介護給付費が増加する現状について紹介するとともに、要支援・要介護となる原因の一つとして挙げられる骨折がどのようにそのリスクを高めてしまうのかについて解説します。
日本における高齢人口の割合
65歳以上の高齢人口は増加の一途をたどっています。
総人口に占める割合は2018年で28.1%でしたが、2040年には35.3%になると見込まれています。
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平均寿命と健康寿命の差
健康上の問題で制限されることなく日常生活を送ることができる期間のことを「健康寿命」といいます。
日本人の平均寿命は、2016年では男性81.0歳、女性87.1歳でした。
しかし、平均寿命と健康寿命の差は、男性で8.9年、女性で12.3年です。
この期間が長くなると、QOLの悪化に加えて家族への負担も増え、また医療費や介護給付費などの社会保障費の増大にもつながります。健康寿命を延ばし、平均寿命に近づけることが重要です。
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高齢化と介護給付費
2015年以降、介護サービスを受けている人は6,000万人を超え、2018年時点での介護給付費は10兆円を超えています。
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要支援・要介護の原因
要支援・要介護となった原因を調査した結果によると、骨折・転倒が12.5%、関節疾患が10.8%でした。
要支援・要介護となった5人に1人は、「骨折・転倒、関節疾患」が原因となっていることが示されています。
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骨密度と骨折リスク
骨密度の低下が骨折リスクに影響を及ぼすことが報告されています。
約90,000人・年、2,000例以上の骨折例を用いて分析を行った結果、骨密度が10~12%低下すると大腿骨近位部の骨折リスクは2.6倍となることが示されました。
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脆弱性骨折の発生状況と今後の推移
ここでは、脆弱性骨折について解説していきます。脆弱性骨折を起こしやすい部位や
年代、国内外の発生頻度と患者数、その推移などについて解説します。
脆弱性骨折とは
脆弱性骨折とは、骨量の減少や骨質の劣化によって骨強度が低下し、軽微な外力によって発生した非外傷性骨折です。
軽微な外力とは、立った姿勢からの転倒かそれ以下の外力をさします。
転んで手をついた、重いものを持ち上げた、尻もちをついた、など健康な方では折れないような外力による骨折です。
参考: Soen S, et al: J Bone Miner Metab 31: 247-257, 2013,
宗圓聰ほか: Osteoporosis Jpn 21(1): 9-21, 2013, [原発性骨粗鬆症の診断基準(2012年度改訂版)]
脆弱性骨折の発生率
性別・年代別にみた脆弱性骨折の発生率です。
橈骨遠位端骨折は主に女性では50歳代から増加していきます。
椎体骨折は60歳代から、大腿骨近位部骨折は70歳代後半から急激に増加します。
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脆弱性骨折の発生頻度
世界では、脆弱性骨折は3秒に1件のペースで起こっているといわれています。
Johnell O, et al : Osteoporos Int17:1726-1733, 2006 を参考に作成
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大腿骨近位部骨折の患者数
日本では年々、大腿骨近位部骨折の患者数が増えています。
2009~2014年に日本整形外科学会より認定された病院、日本臨床整形外科学会の有床診療所において、大腿骨近位部骨折と診断された患者488,759例を調査した結果、女性の方が男性よりも3.6倍多く骨折しており、特に女性では80歳代後半、男性では80歳代前半の患者数がもっとも多いことがわかりました。
Hagino H, et al:J Orthop Sci 22:909-914, 2017
大腿骨近位部骨折発生率の地域別推移
PubMedより抽出した文献51報をレビューし、世界各国における大腿骨近位部骨折の発生率の年変化をみた結果では、日本では増加傾向にある一方、欧州、北米、オセアニアでは減少していることが示されました。
Cooper C, et al: Osteoporos Int 22(5): 1277-1288, 2011
大腿骨近位部骨折患者数の将来推計
2012年に年間約19万人の大腿骨近位部骨折が発生し、2040年には年間約30万人に発生すると推計されています。
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高齢化の進展に伴い、脆弱性骨折患者数が年々増加している