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FLSのための基礎知識

骨折リエゾンサービスの好影響

骨折リエゾンサービス(FLS)とは

骨折リエゾンサービス(FLS)とは

骨折リエゾンサービス(FLS)とは、さまざまな職種の連携により、脆弱性⾻折患者に対する「⾻粗鬆症治療開始率」「治療継続率」を上げるとともに、転倒予防を実践することで⼆次⾻折を防ぐ取り組みです。
Fracture Liaison Serviceの頭文字をとった略語で、リエゾンとは「連絡係」「連絡窓口」「つなぎ」などを意味するフランス語です。
FLSの目的は二次骨折の防止です。脆弱性骨折を起こした患者さんの、「骨粗鬆症治療開始率」「治療継続率」を上げ、リハビリテーションの視点から転倒予防を実践することで二次骨折を防ぎ、骨折連鎖を断つことを目指します。
FLSは1990年代後半にイギリスで開始され、以降、世界の国々で発展しています。
⽇本においては2019年に、「⽇本版 ⼆次⾻折予防のための⾻折リエゾンサービス(FLS)クリニカルスタンダード」が策定されました。
2022年度診療報酬改定では、⼤腿⾻近位部⾻折の患者さんに対して、同スタンダードや「⾻粗鬆症の予防と治療ガイドライン」に沿って継続的に⾻粗鬆症の評価や治療等を実施した場合の評価が新設されました。

二次骨折:既存骨折がある患者で新たに起こった骨折。
脆弱性骨折:骨の強度が低下し、わずかな外力(立った姿勢からの転倒、それ以下の外力)で生じる骨折。

中村利孝 監 . わかる!できる!骨粗鬆症リエゾンサービス 改訂版-骨粗鬆症マネージャー実践ガイドブック- . 大阪 ,
医薬ジャーナル社 , 2016
萩野浩:Clinical Calcium 27(9):1225-1231, 2017
日本骨粗鬆症学会、日本脆弱性骨折ネットワーク. 日本版 二次骨折予防のための骨折リエゾンサービス(FLS)
クリニカルスタンダード 第 3 版 , 2020
厚⽣労働省保険局医療課: 令和4年度診療報酬改定の概要 個別改定事項Ⅴ
(重症化予防、後発医薬品等使⽤推進、療養‧就労両⽴⽀援)(令和4年度3⽉4⽇版)

FLSが骨粗鬆症治療に与える影響

治療開始率と治療継続率への影響

FLSの導入によって骨粗鬆症の治療開始率と治療継続率が上昇することが報告されています。
フランスで、脆弱性骨折により同院のFLSにおいて骨粗鬆症治療薬が処方された50歳以上の患者さんについて、治療継続率を調査した結果によると、FLSが導入された患者さんの90%超が骨粗鬆症治療を開始し、そのうち67.7%が治療を継続していました(平均フォローアップ期間:29.6±13.0ヵ月)。

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日本においても、FLSの導入によって骨粗鬆症治療開始率が上昇することが報告されています。
富山市民病院で大腿骨近位部骨折患者を対象に、多職種連携チームによる二次骨折予防を評価したところ、入院時の骨粗鬆症薬物治療率は平均23%でしたが、退院時の骨粗鬆症薬物治療率は平均89%と、高い治療率であることがわかりました。

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また、FLSの導入によって骨粗鬆症治療継続率にも好影響があることが報告されています。
新潟リハビリテーション病院に入院した大腿骨近位部骨折患者のうちFLSの同意を取得した患者さんを対象に3年間にわたり追跡調査を行ったところ、3年後の骨粗鬆症薬物治療継続率は70%以上と、高い継続性が得られました。

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臨床アウトカムへの影響

各国で、FLS導入によるさまざまな臨床アウトカムへの好影響が報告されています。
FLSとしてコーディネーターが参画する施設では、新規骨折発生率や受療率、薬物治療開始率など、さまざまなアウトカムに差がでたという報告があります。

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患者さんのQOLへの影響

FLS導入によって、患者さんのQOLも向上することが報告されています。
オーストラリアで、FLS導入施設と非導入施設を比較した観察研究結果を示します。
FLS導入施設では後ろ向き対照群として非導入群を設けて比較検討しました。
その結果、FLS導入施設では、非導入施設および後ろ向き対照群と比較して、QOLの指標であるEQ-5DおよびEQ-5DヘルススケールVASにおいて有意な差が示されました(p<0.001、ANOVA)。

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再骨折リスクへの影響

さらに、FLS導入によって再骨折リスクが低減することが報告されています。
西スウェーデンの4施設でFLS導入前とFLS導入後のコホート研究を行ったところ、大腿骨近位部骨折の再骨折リスクはFLS導入後の方がFLS導入前と比べて18%低いことがわかりました。

Axelsson KF, et al: J Bone Miner Res 35: 1216, 2020

FLSが医療経済に与える影響

医療経済的な効果

FLSによる医療費削減効果が世界で認められています。
イギリスでは、骨折数797件に対し5年間で105件(大腿部近位部55件)の骨折の減少および290,708ポンドの医療費削減効果があると報告されています。
カナダでは、患者さん100例につき6件(大腿骨近位部4件)の骨折の減少および230,000USドルの医療費削減効果があると報告されています。
オーストラリアでは、患者さん1,000例につき62件の骨折の減少および617,275AUドルの医療費削減効果があると報告されています。
アメリカでは、患者さん10,000例につき153件(大腿骨近位部109件)の骨折の減少および66,879USドルの医療費削減効果があると報告されています。
スコットランドでは、患者さん1,000例につき18件(大腿骨近位部11件)の骨折の減少および21,452ポンドの医療費削減効果があると報告されています。

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日本の環境でのシミュレーションにおいて、FLSによる薬物治療の継続は、無治療の場合と比べて、費用対効果に優れることが報告されました。
特に骨折リスクの高い患者さんでは、FLSの介入により治療を行うと、無治療の場合と比較して死亡時までの関連総費用を抑制することが期待できると示されています。

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FLSクリニカルスタンダード

世界のFLSクリニカルスタンダード

FLSの取り組みを先駆的に行ってきたニュージーランドやイギリスなどの諸外国では、その定義や取り組み内容を標準化し、普及させるためのFLSクリニカルスタンダードが策定されています。

日本のFLSクリニカルスタンダード

2019年6月、日本版 二次骨折予防のための骨折リエゾンサービス(FLS)クリニカルスタンダードが公表されました。
著作学会は日本骨粗鬆症学会と日本脆弱性骨折ネットワークです。
骨粗鬆症に関連する学会および機関がこのFLSクリニカルスタンダードを支持しています。

FLSクリニカルスタンダードの目的

可能な限り多くの病院において二次骨折予防の取り組みを効率的に行える、最低限必要な指標を提供すること

FLSのスキームとチーム編成

FLSのスキーム

FLSクリニカルスタンダードで定義されているFLSのスキームは、5つの構成要素で示されます。
その5つは、
1.対象患者の特定(Identification)、2.二次骨折リスクの評価(Investigation)、3.投薬を含む治療の開始(Initiation)、4.患者のフォローアップ(Integration)の流れで行われます。
5.患者と医療従事者への教育と情報提供(Information)は、1~4のすべてのステージにおいて横断的に行われるべきと考えられています。
これら5つの要素は各要素の頭文字から、5i(ファイブ・アイ)と呼ばれます。

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FLSのチーム編成

FLSクリニカルスタンダードで推奨されているFLSのチームメンバーは、医師、看護師、薬剤師、診療放射線技師、管理栄養士、理学療法士、作業療法士、医療ソーシャルワーカー、介護福祉士などですが、どのような職種でチームを編成するかは、各施設の状況にあわせて決定することが重要であり、そのための連携教育も重要であると考えられています。

Point

FLSは骨粗鬆症治療開始率と治療継続率、患者さんのQOL、医療経済に好影響を与える

From Student Office

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