HOMEClassroom FLSのための基礎知識二次骨折予防の重要性
FLSのための基礎知識
二次骨折予防の重要性
脆弱性骨折が健康や歩行能力、生存率に及ぼす影響
脆弱性骨折を起こした患者さんの二次骨折を予防することはとても重要です。
なぜなら脆弱性骨折は、患者さんの健康度や歩行能力、死亡リスクに影響を及ぼし、骨折回数を重ねるごとに深刻さが増すためです。
健康への影響
橈骨遠位端骨折は、50歳代に起こることが多く、一時的に健康度が悪化しますが短期間で回復します。
60歳以降になると椎体骨折を起こしやすくなり、椎体骨折を繰り返すと、悪化した健康度が元には戻らなくなっていきます。
さらに、80歳頃に起こる大腿骨近位部骨折では健康度が非常に悪化し、その状態が維持されます。
Kanis JA, et al: J Endocrinol Invest 22: 583-588, 1999
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歩行能力に及ぼす影響
大腿骨近位部骨折は歩行能力にも影響を及ぼすことがわかっています。
大腿骨近位部骨折の治療を行った1,170例を対象に、初回骨折前、反対側骨折前、両側大腿骨近位部骨折後の歩行能力を評価したところ、両側の大腿骨近位部骨折後、杖や歩行器なく一人で歩くことができる患者さんは7.1%に過ぎませんでした。50%超が車椅子を必要とし、寝たきり・死亡となる患者さんも10%程度みられました。
五十嵐貴宏ほか:東北整災誌 58(1):21-24, 2015
歩行状態への影響
65歳以上の大腿骨近位部骨折の患者さん536例を対象に、骨折後の元の状態への回復程度について検討したところ、骨折から1年後、約40%の患者さんは元の歩行状態に回復していませんでした。
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死亡率への影響
大腿骨近位部の両側骨折は、片側骨折より死亡率が高いことがわかっています。
2006年~2008年に大腿骨近位部骨折の治療を行った患者さんを2010年に調査したところ、片側のみの骨折例の死亡率は9.9%でした。
一方、両側の骨折例での死亡率は26.7%であり、両側を骨折した患者さんは、片側を骨折した患者さんに比べて死亡率が高いことが示されました。
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脆弱性骨折は健康や歩行能力、死亡率に影響を及ぼす